Walk Don't Run

日常にいくばくかのジワリがあれば

ぼくのはじめての海外旅行。(前編)

「若い時にもっと旅に出て世界を見ておくべきだった」 オトナの後悔リストの定番だが自分がオッサンになってみると本当につくづくそう思う。 LCCなんてものは無かったが時間は腐るほどあったのだ。 工夫次第でいくらでも機会は作れたはずだ。

 

 

私の初めての海外旅行は大学卒業間近だった。 と聞くと華やかな卒業旅行をイメージするかもしれないが、陰キャで基本ボッチ君だったのでそんなものには誘うことも誘われることも無かった。 当時は海外旅行にも興味が無かったのにどうして行ってみようと思い立ったのかは全く覚えていない。

行き先を韓国にしたのはあまり財布に余裕が無く遠くまでは行けなかったからだろう。 今でも不思議なのは、初めての海外そして一人旅にも関わらず、何の準備もせずに出発したことだった。 買ったのは山口県の下関と釜山を結ぶフェリーの片道チケットだけ。 それ以外は帰りのチケットも現地の宿泊も、何も調べず手配もしなかった。 小心者の私がなんでそんなことができたのか。 「オレってちょっと変わってるし」という若者特有のイキりだったのか、それとも単なるバカだったのか、今だもって謎である。

 

 

下関のフェリーターミナルは背中に大量の商品を背負った行商のオバサンで賑わっていた。 フェリーはここを夕方出発し翌朝早くに釜山に到着する。(実際はそんなに時間が掛からないので夜が明けるまで釜山港沖で停泊し時間調整が行われる) 初めての出国手続きを済ませ船に乗り込む。 節約のためもちろん2等船室、雑魚寝のカーペットフロアである。

最初の洗礼は船酔いだった。 大きな船ということで油断していたが、ゆったりとした揺れでもすぐに気分が悪くなってしまい、食事も取らずに横になるといつの間にか眠ってしまっていた。

 

夜中に目覚めると気分はいくらか良くなっていたものの、もう一度眠ることはできそうになかったので船内を歩き回ったり、窓から真っ黒な海を眺めたりして過ごした。

 

夜が明けると目の前には釜山の街がひろがっていた。 デッキに出て眺めていると、船室で近くに陣取っていたオジサン二人組が声を掛けてきてしばらく雑談をする。 仕事で来ているそうで、このフェリーも釜山の街も常連ということであった。

「もし良かったら一緒に朝メシ食べてかない?」 気軽な感じで誘われた。 「はい、お願いします」 旅行記や映画なんかだと完全にフラグが立った状態である。 店とグルになっていてボッタくられるか、最悪睡眠薬でも盛られて身ぐるみ剥がされるか。

今の私なら丁寧にお断りしていると思う。 しかしこの世間知らずのチェリーボーイは微塵も疑うということをしないのだ。

 

 

ラッキーだった。 オジサン達は単なるフツーにイイ人だった。 釜山の市場に連れて行ってもらい刺身や煮物など色々と食べたにもかかわらず代金は決して受け取らず、最後に「気を付けて」と言い残し去っていった。 これも”ビギナーズラック”の一つだったのかも知れない。

 

さて、釜山に来てみたものの何の予定も立てていない。 とりあえず釜山タワーにのぼり、その後はひたすら街をブラブラしていたように思う。 今は違うのかもしれないが当時は店舗の看板や案内にも英語や日本語表記は少なくほぼハングルばかりだった為、どんな店なのか、何を売っているのかが外観からはイマイチわかりづらかった。 窓から覗いて入ろうか迷ってやっぱりやめる、というパターンを何回も繰り返していた。 なんだかんだ言って恐怖心があったのだと思う。

 

昼食はさんざん迷ったあげく地元の人が多そうな小さな食堂に入ってみた。 小さくて不鮮明ながらもメニューに写真が載っていたからだ。 やたら色が赤いのは気になったものの一人鍋みたいなのと炒め物を頼む。 やってきたのは写真以上に真っ赤な料理だった。 頑張って食べたものの最後は結局ギブアップ。 ごめんなさい。

 

 

夕方になり宿を探すことにする。 トリバゴもexpediaも無い時代、脚で探して直接交渉だ。 気に入ったのはオンドル部屋がある小綺麗なホテル、運よく空室もある。 とりあえず一泊だけお願いしてチェックインした。

 

部屋でしばらく休んでいたところ、だんだんと頭が暑くなりクラクラとしてきた。 初海外の緊張の糸がいったんほどけたせいか、あるいは昼に食べた真っ赤なアイツのせいか。 すぐにもうまともに立っていられないくらいに悪化した。 今日はもう外出もできないだろう、熱いシャワーだけ浴びて寝ることにする。

 

残念ながら翌朝になっても体調は回復していなかった。 全身が熱い。 初めて海外に来てこのザマだ。 しかもヒトリ。  頼れるものが無い以上とにかく体調を戻すしかないとその日は完全休養に充てることにした。 ホテルに連泊を申し出る。  「Don't Disturb」 部屋で布団をかぶりひたすら眠り続けた。

 

 

(後編に続きます)

 

Busan harbour

 

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