先日、仕事帰りにコーヒーを飲みながらブログを書いたりしていた時のこと。
ちょっとしたメモを取りたくなった僕は、いつも持ち歩いている小さなペンケースを探してみるがカバンの中に見当たらない。 おそらく自宅か職場に忘れたのだろう。
別に大した内容でもないし、とりあえずスマホかPCに打ち込んでおいて後から書き写せば済むことだ。 しかしその時はなぜか、どうしても今ここで、そして赤のペンでメモを取りたい、取らねばならないように感じられた。
今までの、普段の僕ならば考え得る選択肢はお店のレジへ行ってペンを借りる、その一択である。 ところがその日は謎の行動力が発揮された。 2~3席離れたところに座る見ず知らずの女性にペンを借りてみようと思い立ったのだ。
見ず知らずというのは実は正確では無い、同じ時間帯にテーブルにテキストを拡げて何かの勉強をしている姿を何度か見かけたことがあったから。
どうせカワイイ子だったんでしょ、というヤボなツッコミは今回はご遠慮いただこう。
ペンを借りるための条件は整っていた。 まず彼女のテーブルには結構大きめのペンケースが置かれていて何らかの赤ペンを持っていることはほぼ確実だった。 そして店内の僕らの周りには他の客はおらず、僕の言動が誰かに見とがめられる可能性は無かった。
謎のパワーに導かれた僕は何の躊躇もなく席を立ち彼女のテーブルに向かう。
「スミマセン・・・」
一つだけ想定外だったのは彼女がワイヤレスタイプのイヤホンを付けていたこと。 髪に隠れて見えなかったのだ。 そのため僕の最初の一言は虚しく音楽にかき消された。
「あの・・・スミマセン・・・」
今度はさっきより少しだけ大きな声で話しかけたので彼女はテキストから顔を上げてくれた。
「何か赤いペンみたいなのをお借りできないでしょうか・・・」
ペンみたいなのって何だよ、ペンだろが。と自分でも思いつつ、そして当然の反応であるが彼女のやや怪訝そうな顔にも僕は全くひるまなかった。 本当にその日は謎の大胆さが備わっていたのだ。
「すぐにお戻ししますんで。。。」
幸いにも彼女は快く赤いボールペンを貸してくれ、僕は無事にメモを取ることができた。
「ありがとうございました、助かりました」
もし映画や小説ならば、 「何か資格とかの勉強ですか?」 「えぇ、でもなかなか覚えられなくって・・・」 「頑張ってくださいね」 そして後日近所のスーパーでばったり、みたいな展開になるだろうが、もちろんそんな続きは無い。 当たり前だ。 むしろ断られたり逃げられたりしなかっただけでも上出来だと言えるだろう。
どうしてあの日はあんなに大胆に、何の躊躇もなく自然に行動に移せたかはわからない。 年齢を重ねることで得られる数少ないメリットの一つが、こうやって多少図々しくなれることなのかも知れない。
もしまた今度、あの店で彼女を見かけることがあったなら。 「このあいだは助かりました」とお礼を言うべきか、あるいは軽く会釈をする程度にすべきなのか、それとも全く何事もなかったかのようにスルーすべきなのか。 そこだけはいまだにちょっと悩んでしまう。
まぁその時はその時だ。 直感のままに対処してみようと思う。
コメント
何故か急にそういうことができるとき、私も実感としてわかります。以前ジムのプールで、泳ぎ方がヘタなので、プールサイドを歩いていたトレーナーの女性に泳ぎを見てもらったことがありました。特に「教えます」とか謳っていない施設なのですが。
一方でそういうところで泳いでいると、年配(大体定年でリタイアした年代)の男性は、頼んでいなくても話しかけてきて泳ぎ方をレクチャーしてくれたりする。よほど私の泳ぎの下手さが気になるのかもしれませんが、私は独り静かに泳ぎたいのに、とか。人は手前勝手ですね(私が)。
id:tkfms さん 年齢を重ねる+何らかの要因で積極スイッチが入った状態=見知らぬ女性に話しかけることができる。って感じでした、自分の場合は。 不思議です。。。