おじさんになれば自然と行きつけの飲み屋の何軒かくらいはできているかと考えていたのだけど、そう簡単では無かった。
「行きつけ」の定義は難しいところだが、個人的にはやはり日常的な行動範囲の中にあるのが絶対条件かと思う。 自宅や仕事場の近く、いやできればすぐ近くではなくそれらを結ぶ線のどこかで見つけたい。
もちろん時間や手間を掛けて足を延ばすのもアリなんだけど、やっぱり思い立った時に気負いなくフラリと立ち寄ることができてこそだと思うので。
そう考えると条件に合って自分の好みにもハマる店を見つけるというのはそんなに単純な話では無いことがわかる。 (もちろん住んでいる場所とかにもよるけども)
私は仕事帰りに途中下車して一駅二駅歩くのが好きなのだけど、その店はそんなブラブラ歩きの最中に見つけた。
何度か前を通るうちにその店構えから漂う雰囲気がだんだんと気になってきて、あるとき意を決して入ってみることに。
ひとりで飲み食いするのは好きなのだが、いかんせんコミュニケーション能力が低いので初めての店はそれなりに緊張する。 のれんで中もチラチラとしか見えないので客層とかもイマイチつかめないし。
しかし入店してみると果たして店内は外観以上にカッコ良かった。 質実剛健というのか無駄な装飾や設備が無いのがいい。
立呑屋なのでもちろんちゃんとした席は無く、カウンターとビールケースを積み上げた簡素なテーブル。 壁に貼られた手書きのメニューやお酒のポスター。
先客はカウンターでアテをつまむおじさん3人ほどと二人組のサラリーマン。 ガラガラでもなく混み過ぎてないのも良い感じ。
サワーを注文し、とりあえず目にとまったおでんを頼んでみる。 大根や厚揚げ、こんにゃくといったベーシックなたねはひとつ90円。 ロールキャベツや豆腐なども百円台なので財布を心配する必要は無さそうだ。
あとはやっぱり好物のポテサラは食べとかないとね。
この日は時間的にも腹具合的にもこれで打ち止めにしておいた。 お会計は千円いかず。 うん嬉しい。
気に入ってしまいあれから何度か立ち寄っている。
なんとなくおでんはマストな感じになってしまい毎回注文してる。 カウンターの上には煮物や肉等の小鉢が並んでいて、それを温めてもらって食べるのも楽しい。
ちなみに言うまでもないかもだけど酒屋さんがやっている角打ち的なお店なので、日本酒、焼酎、ワイン、マッコリ等々なんでもイケます。 結構珍しいメニューも揃ってるので、飲んだことの無いお酒を試してみるのもまた良し。
アジフライやカキフライなどの揚げ物はもちろん注文してからつくってくれるので熱々で美味。 そしてどれも安い。
料理やお酒も美味しいんだけど、やっぱり何といっても店全体としての雰囲気、居心地が良いのが一番の魅力なのかな。 たぶん家族経営なんだと思うんだけど(全然違ったりして・・・)柔和な雰囲気のおかみさんと、これまた優しそうな息子さん?で切り盛りしていて距離感がちょうど心地良い感じ。
それに営業時間が夜9時までなのもあるんだろうけど、グダグダと酔いまくっているようなお客さんがいないのも良いところ。 皆さんサクッと飲んでサクッと帰る、みたいなスタイルなのがカッコイイ。
「行きつけ」と言うにはまだ程遠いけど、自分なりの定義・好みにピッタリ合う店と出会えて何だか嬉しい。 末永く通えるようにしたいと思う。