日常の中に起きた小さな偶然の話。

先日、家族で近くのうどん屋に昼ご飯を食べに行った時の話だ。 その店は「結構気に入っているんだけど、家から近すぎるが故に逆にめったに行かない」、そんな感じの位置付けだった。

その日は何でそこに行こうと思ったんだっけな、、、子供にお昼ご飯に食べたいものを聞いたら「ウドン」って言ったんだっけ。 いつもは丸亀製麺に行きたいということの多い(財布に優しい)我が子だけども、その日は何となく皆で話してそのうどん屋に行くことにしたのだ。

注文しようとメニューを見ていると、「これまでのご愛顧に感謝して」みたいな特別メニューが挟んであるのに気が付いた。 「ありゃ、閉店しちゃうんだねぇ。」「残念。」 妻とそんなことを言いながら注文をする。

いつも通り美味しくうどんを食べていると、なんだかちょっと外が賑やかになってきた。 店員さんが表に出てお客さんを見送っているのだ。

その時点でようやく思い至った。 今日がその閉店日なのだと。 そして閉店時刻が30分後だということにも。

それはつまり、15年間この地で営業してきたこのうどん屋の、記念すべき(というのはおかしいかも知れないが)最終の客が我々になってしまう可能性を意味していた。

さすがにそれはマズい。 何がマズいのかはよくわからないが、何も知らず適当に来ただけなのに、閉店を惜しんでわざわざ最後に食べに来た常連のような感じになってしまったことに妙な気恥しさを感じ、子供を急き立てるように会計に向かう。

幸い店内にはまだ食べている客が残っており、最後の客になるという事態は何とか回避することができた。 それでも帰りにはお土産を渡され、入り口で記念写真を撮ってくれ、丁寧なお見送りまで付いてきた。 店員さんに妻が「閉店しちゃうの残念です。」と言う。

「残念だね。」 帰りのクルマの中で僕らはもう一度同じことを言った。

ちょっと大袈裟なタイトルを付けた割にはオチも無く申し訳無い。 以上がこの話の顛末である。

地元の良店が無くなってしまうのは寂しいが、なんだか素敵な瞬間に偶然立ち会えたような気もする。 そんな体験だった。

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